2006年12月。
○○○○はないね。
それが最初の出会い。
阪神ジュベナイルFを圧勝したその馬はウオッカ。
ウォッカじゃなくてウオッカという妙なこだわり。
母はファイトガリバーの桜花賞に出走していたタニノシスター。
マイナーだけど知ってる馬。
エルフィンS、チューリップ賞と3連勝を重ね向かえた桜花賞。
誰もがウオッカの勝利を予想した、チューリップ賞で負かした相手。
終生のライバルとなるダイワスカーレット。
そしてダービー出走。
同じ2歳チャンピオンビワハイジの失敗を見て来ているだけにウオッカを殆ど信用してなかった。
パドックを見て完成された馬体を見てまさかを予感する。
だがしかし・・・牝馬のダービー馬なんて3冠馬誕生より見られない。
何せ64年という空白が空いているぐらいありえないこと。
引っ掛かるヴィクトリー、全く伸びないフサイチホウオー。
それらを尻目に・・・直線力強く伸びたウオッカを見た瞬間・・・。
ダービーを長年見続けて来たが・・・。
初めて・・・初めて・・・ゾっとした。
ダービーの真っ最中は体温上昇しまくり之助でボルテージマックス状態。
それなのに・・・一気に冷めた、冷めたというか冷やされた。
まさか牝馬のダービー制覇の瞬間を目撃できるなんて・・・。
一緒に観戦してた房一俺君の一言が印象に残っている。
「3冠馬はこれから何度か見れるかも知れないけどこれは生きてるうちにはもう見れないかも」
同感、全くの同感。
その後ウオッカは惜敗を繰り返す、ライバルのダイワスカーレットは着実に勝利し安定した成績で結果を残す。
そして・・・2頭が再び合い間見える。
2008年、天皇賞・秋。
ウオッカよりもダイワスカーレットのほうが1枚上。
そう信じてた、ダイワスカーレットを捕まえられるのはよほどの馬。
逃げるダイワスカーレットに追うウオッカ。
間からディープスカイ、さらにはカンパニー。
そして2頭が並んでゴールイン・・・!
レース実況、場内の何万の大観衆が同じ発言をする。
「どっちだー!?」
スロー再生を見ても全くわからない。
写真判定はやたらやたら長引いた。
上位2頭はどっちでも良かったが3〜4着が微妙っぽく見えたワシにはディープ3着!ディープ3着とずっと呟いてた。
誰だったか、下村君かな?余裕でディープ3着ですよ、とか突っ込まれたっけか。
ターフビジョンからふと目線を外し後ろを向いてお喋り。
いきなり起こった大歓声!
確定の瞬間を見逃しちゃった・・・。
勝ったのは・・・ウオッカ・・・紛れもなくウオッカ。
天皇賞が確定したあとも何度も何度もレースリプレイを食い入るように見た。
こんなにレース1つで熱くなったのは・・・久し振りだった。
1度は自分を物凄く冷やした馬が今度は物凄く熱くさせるなんてね〜。
最後の勝利となるジャパンカップ。
勝っても負けてもウオッカは応援する。
誰しもがこれがウオッカの最後のレースと感じていた。
オウケンブルースリとの叩き合い、再び写真判定。
今回は勢いがオウケンブルースリのほうがまさっている。
自分の周りの人間誰しもがウオッカの2着を確信していた。
しかし結果はウオッカ1着・・・また2センチ差・・・。
全く・・・ウオッカのハナはとてつもなく大きな差があるんだな。
ダービーを含むG17勝した牝馬。
牡馬より普通に考えれば力の劣るであろう牝馬。
その牝馬がダービー勝つわ、天皇賞勝つわ、ジャパンカップ勝つわで・・・。
ダンスパートナー、エアグルーヴ、メジロドーベル、ファレノプシス、テイエムオーシャン、トゥザヴィクトリー、ファインモーション、ビリーヴ、スティルインラブ、スイープトウショウ、ダンスインザムード、色んな牝馬を見てきたけどこんなに強い馬は恐らくウオッカは1番抜けている。
単純な強さだけならダイワスカーレットのほうが上かも知れないが、大きな故障もなく長くに渡って活躍した息の長さこと名馬の証。
ドバイWC参戦は心の底から反対だった。
それだけに本番前の引退は正直ホっとした。
ホクトベガを思い出すとどうしてもドバイWCラストランというのは気が引ける。
もう・・・こんな名牝に生きてる内に出会えることはおそらく無いだろう。
もし何十年後か先に、ダービーを勝つ牝馬が現れたら・・・その時はウオッカを知らない世代に語り継ごうと思う。
最後に一言。
今まで競馬を面白くしてくれて有り難う、そしてお疲れ様。