ダービーウィーク

19年前か、初めて日本ダービーを見に行ったのは。
今じゃ考えられない入場制限もあったんだよなあ。
それに入場するには事前に前売り入場券を買わないといけなかったそんな時代。
しかもその入場券は毎回全て売り切れていた。
初めて見に行ったダービーというのは何もかもが新鮮で体験したことのない未知の世界だった。
初めて生で見た競馬がダービーというのは本当に人生が変わる。
あんな素晴らしい馬体をした馬を見て、1万頭近いサラブレッドから18頭しかその権利がなく、その中でたった1頭の頂点を決めるのだからダービーというのは何度見ても飽きない。
10万を越える大観衆が東京競馬場で自分がこれだ!と思った馬、騎手の名前を叫ぶ、絶叫する。
いっくら自分の声の大きさに自信があろうとあの場所では全てが霞む。
2分30秒足らずのカップラーメンも作り終わらないそんな時間の内に全てが始まり全てが決まる。
18万分の小田切ロロで最後何が勝ったのか全くわからなかったが、フサイチコンコルドだと解ってもその馬を全く知らなかったあの時。
鎖骨骨折していて本来なら安静にしておくべきだが無理矢理奮起して見に行き皐月賞馬を侮ってその強さに心底驚かされたサニーブライアンを見たあの時。
今まで天才と呼ばれた騎手が何故か勝てなかったのにいざその瞬間を迎えるとそれまでの勝てなかったのが嘘のように差が開いていくスペシャルウィークを見たあの時。
18頭いるけどこの3頭以外は全ていらない、テイエムオペラオーナリタトップロード、そしてアドマイヤベガが1番外から3頭飛んできたあの時。
終始最後方で最後も1番外から豪快に強襲、だがそうなると信じて応援していたアグネスフライト河内洋のガッツポーズを見たあの時。
外国産馬にも開放されたが、それでも日本のダービーを制するのは日本生まれのジャングルポケット、そしてウイニングランでの勝利の雄叫びを見たあの時。
自分の夢は直線入ってすぐに消滅したが悔いはなかった、最初で最後のナリタブライアン産駒のダービー挑戦を尻目に大外駆け抜けたタニノギムレット、レース後それを祝う大きな虹を見たあの時。
2冠達成、それも外国人騎手による快挙、秋には京都へ応援に行く決意をする、そんなネオユニヴァースミルコ・デムーロを称えるミルココールをしたら周りもミルココールをしてくれたあの時。
大王降臨キングカメハメハ、勝ち時計2分23秒3は向こう10年は出ないと確信していた、それ以上の馬なんて歴史的名馬しかありえないと思っていたあの時。
直線コース、カメラが大外を撮した瞬間そこには皆の期待を背負った歴史的名馬ディープインパクトの姿が、それに反応し一斉に新聞を天高くかざす16万の観衆の見事な華を見たあの時。
そこにいるのはリーディング上位常連騎手じゃない、派手さはないが堅実、関係者やファンからも愛された苦労人石橋守メイショウサムソンより騎手が目立っていたあの時。
生きていて一生に1度見れるか見れないか、多分もう生きている内はもう2度と見れない、64年ぶり牝馬によるダービー制覇のウオッカを見て素直に恐ろしいと寒気がしたあの時。
父が果たせなかったダービー制覇、変則2冠のディープスカイ、連覇の四位洋文騎手のインタビューを見て普通にビックリ&ドン引きしてしまったあの時。
自分のないねの呪いが最もやってしまったと思ったロジユニヴァースリーチザクラウンのワンツー、どっちも皐月賞で一押しだったのに・・・ないね恐ろしいと自画自賛してしまったあの時。
ダービーでは恒例となった出場騎手紹介イベントで毎年見事な回転をする内田博幸、まさかずっと盛り上げ役だと思っていたのにエイシンフラッシュで主役になってしまったのを見たあの時。
強いとは思っていたが、まさかこれほど強いとは・・・おかげでまた秋に京都に行くことになった、3冠はもう確実なのか?オルフェーヴルは・・・ディープにはない何かを見たあの時。
兵庫競馬から中央に参戦し次々にタイトルを積み重ねてきた岩田康誠騎手、ダービーだけは無縁かと思ったがディープブリランテで制し馬上で涙して思わず貰い泣きしたあの時。
2012年のPOG企画でキズナエピファネイアが非常にいい馬と発言、その1年後、その2頭がダービーの晴れ舞台で見事にワンツーを決めた瞬間を見たあの時。
全てはっきり覚えているよ、18年分全て。
そして今年はどんな「あの時」になるのか。
2冠か?牝馬による制覇か?あの馬の巻き返しか?
歴史に珍名の名を刻むのか?
あの時間を迎えるまでの時間が・・・実に楽しい。